
〜 1.ガラスの概要 〜
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a. ガラスの歴史 |
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- (1)起源(BC3000〜2000)
- ローマの博物学者プリウス(AC23〜79)の「博物誌(全37巻)」の中に話が出ている。
古代シリア(現イスラエル)の海岸で フェニキア(現レバノンの周辺にあったエジプトの属国)の商人が炊事をした時、カマドにした積荷のソーダ塊と砂浜の白砂が混じり合い 熱せられて 透明な物質が流れだしたと言う。
- (2)古代(BC1500頃)
- 地中海に面する シリア キプロス エーゲ海周辺 エジプト ならびに チグリス・ユーフラテス川に挟まれたメソポタミアを中心に 急激に拡がった。
同時期に 技術交流で 中国にも伝わっている。
ガラス工芸の 本格的な幕開けである。
粘土で型を作り 溶かしたガラスを押し付けて成型する「型押し法」がこの頃確立した。
しかし 生活用品には程遠く 非常に高価な 装身品 装飾品であった。
- (3)ローマ時代(BC27〜AC395)
- 「吹きガラス技法」が発明された。
細い鉄パイプの先に 溶かしたガラスを巻き取り 息を吹き込んで膨らませて 成型する方法である。
ガラス工芸史上、最も画期的な生産技術革命と言われている。
この技法は 古代シリアのパレスティナ地方が発祥の地との説が有力である。
これによって ローマとイタリア各地域に ガラス工業が確立され、同じタイプの製品が大量に生産されるようになった。
現在も ガラス工芸の基本的技法として 世界中で使われている。
- (4)中世
- ローマ帝国は東西に分裂し AC467に西ローマが消滅した。
これをさかいに ガラス工人は離散し ガラス工芸も衰退していった。
辺境に移り住んだ工人達は フランク王朝(ゲルマン民族) ササン王朝(メソポタミア地方のイラン人) ビザンチン王朝(イタリア・ギリシャ・トルコ)などで それぞれ 新様式のガラス器を誕生させた。 フランク・ガラス ササン・ガラス ビザンチン・ガラスなどと呼ばれるものである。
エナメル彩色や色ガラスの製造も盛んに行われた。
特に 12世紀頃に ビザンチン帝国で開発確立されたステンドグラスは 隣接した東方の回教国にも普及しステンドグラス工芸の基礎を作ったと言われている。
- (5)近世
- 13世紀に滅亡した東ローマ帝国のガラス工人の大部分は イタリアの当時のヴェネツィア(ベニス)共和国に移動し、一世を風靡したあのヴェネツィア・グラスを興した。
「ガラス製造業者および工人・助手・家族等の全ては ムラノ島(沖合いの小島)に移住し、島外に脱出する者には死罪を課す」 1291年に 共和国が発した政令である。
15〜17世紀にかけては ヴェネツィア・グラスの最盛期で、世界のガラスを牛耳っていた。
ムラノ島は 現在でもヴェネツィア・グラスのメッカであり、多くのガラス工房で制作が行われている。
この頃制作されたガラス器は多種多様で 食器・シャンデリア・ランプ・動物や船のガラス細工・室内装飾物・窓ガラス・鏡 などなどである。
鏡については 1507年に水銀を使ったガラス鏡が発明され、1682年に完成したベルサイユ宮殿のガラスの間は ムラノ島から工人を引き抜いてきて作られた。
これを契機に フランスでは鏡のブームが起こった。 大板ガラス製造の成功と相まって 大板鏡のヨーロッパ市場を制し、鏡の輸出国としての地位を固めたのである。
- (6)産業革命
- 18世紀後半に起こった産業革命に合わせるかのごとく、「吹きガラス技法」も「手吹き円筒法」へと進化し、従来より品質の良い 薄い板ガラスが作られるようになった。
吹いたガラスを円筒状に形成し 縦に切り込みを入れる。 それを熱した炉の中で平らに開いて板ガラスにする工法である。
1857年には ドイツで蓄熱式加熱法が発明され、ガラスを溶解する技術が大きな進歩を遂げた。
これらを契機に ガラスは 工芸の世界と 板ガラスを中心とする工業の世界へと 分化していくのである。
- (7)20世紀以降
- ガラス工業は ガラス新興国アメリカにおいて 機械による大量生産が始まった。
1902年には アメリカ人ラバースが「機械吹き円筒法」を完成した。 革新的な大量生産の夜明けである。
1952年には イギリスのピルキントン・ブラザース社によって「フロート法」が開発された。 第二の生産技術革命である。
溶解したガラスを窯から送り出し ガラスより比重の大きい溶解金属のフロートバスの上を浮かせながら流す方法である。 この流れる速さによって厚みが決まってくる。
この方法は 板ガラス工業の製造法として 世界中に普及し 現在に至っている。
型板ガラスや網入りガラスを製造する場合は 窯から出てきた溶解したガラスを 2本の水平なロールの間に通してから、冷却 切断する。
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b. ガラスの特徴 |
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- (1)状態
- 学術書によると「溶融物を結晶化することなく冷却固化させて得られる非晶性の無機材料」と定義される。
要するに過冷却された液体みたいなものということである。 溶融している状態から冷却されて本来結晶になるところを、そうはならず非晶質のまま固まってしまったのである。
分子の結びつきが緩やかということで透明でしかも表面が滑らかになる訳である。
- (2)失透
- 溶融状態からガラスが冷却され固まっていく過程で結晶が析出して、透明さを失う現象のことである。
固まりつつある温度領域で長時間保持したりすると、結晶化を起こすことがある。 この温度域は約1000℃前後である。
硬質ガラス(後出)を熱加工するとき 失透現象が起こり易い。
- (3)結晶化ガラス
- 失透現象を積極的に利用し、意図的に結晶を析出させたガラスである。
結晶を作ることでさまざまな利点が生まれてくる。 例えば熱膨張率が低くなり耐熱度が増す。 また機械的強度も高くなる。
従来のガラスと異なった様々な特性を持ったニューガラスを作る一つの方法となっている。
- (4)熱膨張係数
- 0℃〜300℃間の熱膨張の平均値で表す。(係数*10−7/℃で記す)
板ガラスなど一般的なガラスで90〜100位である。
違う種類のガラスを合わせて使用する場合、熱膨張係数が合っている必要がある。 しかしガラスが実際に固くなり始めるのは300℃より高い温度であるため熱膨張係数あっているからとて安心は出来ない。 実際に合わせてみないと分からないという面もある。
- (5)硬質ガラス
- 熱膨張係数が60位までのガラスを指す。
硬質ガラスは表面の硬度が固いという意味ではなく温度変化に対して強いという意味で硬質と呼んでいる。
代表的なパイレックスで熱膨張係数が33前後である。
- (6)アイスクラック
- ガラスを冷気や水などで急冷してひび割れを強制的に作り、再度加熱後徐々に冷やして作る。
表面に氷を砕いたような網目状の模様が現れる。
- (7)徐冷
- 徐々に冷却することは非常に大切なプロセスである。
「徐冷点はその温度以下では歪が取れない
歪点はその温度以下では歪が発生しない」温度のことをいう。
徐冷点は歪点より30〜100℃位高い。
徐冷点から歪点までの間をゆっくり温度を下げることで、ほぼ歪の発生を防ぐことができる。
徐冷点は板ガラスで550℃、鉛クリスタルで450℃、硬質ガラスで600℃位である。
- (8)化学耐久性
- ガラスは溶けにくい珪砂(SiO2)をソーダ分(Na2O)などを添加して溶け易くしたののでもある。
ソーダ分を入れ過ぎるとあとからソーダ分が粉を吹いたように滲み出てくる現象がある。
一つの基準としてアルカリ溶出試験があり食品衛生法でもその限度を定めている。
化学耐久性はアルミナ(Al2O3)や酸化亜鉛(ZnO)などを加えることによって、またソーダ分を硼素分(B2O3)で置き換えることで増す。
- (9)安全性
- 成分の中には一部有害なものもあるが溶出量は極めて微量であり、問題になるほど溶け出すことはない。
しかし全くゼロでもない。
食品衛生法でシッカリ基準を設けている。
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c. ガラスの基本材料 |
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| No. |
材 料 |
活用成分 |
組織比率(%) |
役 割 |
特 徴 |
備 考 |
| 1 |
珪砂(SiO2) |
SiO2 |
70 |
骨材 |
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鉄分が多いとグリーン色 |
| 2 |
リン酸(P2O5) |
P2O5 |
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骨材 |
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特殊ガラスの一例 |
| 3 |
ソーダ灰(Na2CO3) |
Na2O |
12〜18 |
シリカを溶かす |
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多くなると化学耐久性が悪くなる |
| 4 |
炭酸カリ(K2CO3) |
K2O |
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シリカを溶かす |
表面の艶良・発色良 |
鉛クリスタルではNa2Oの代わり |
| 5 |
炭酸カルシウム(CaCO3) |
CaO |
3〜12 |
強度を与える |
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板ガラス・ビンには多く入っている |
| 6 |
硼砂(Na2B4O5) |
B2O3 |
0〜3 15〜16 |
シリカを溶かす(Na2O補助) 熱膨張係数を下げる |
硬質ガラスと称す |
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| 7 |
水酸化アルミ(Al(OH)2) |
Al2O3 |
1〜2 (硬質ガラスでは3) |
化学耐久性を高める 温度変化に対し固くなりにくい |
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| 8 |
鉛丹(Pb3O4) リサージ(PbO) |
PbO |
5〜30 |
温度変化に対し固くなりにくい 軟らかく加工しやすくなる |
表面の艶良・屈折率大 比重大・金属音 |
フルクリスタル PbO分 24% セミクリスタル PbO分 8〜12% |
| 9 |
炭酸バリウム(BaCO3) |
BaO |
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X線吸収率大・屈折率大 |
鉛レス クリスタルガラス |
| 10 |
酸化亜鉛(ZnO) 炭酸リチウム(Li2CO3) 酸化マグネシウム(MgO) 酸化チタン(TiO2) 酸化ジルコン(ZrO2)
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ZnO Li2O MgO TiO2 ZrO2
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d. ガラスの着色 |
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| No. |
発 色 |
着 色 剤 |
添化量(25kg当り) |
備 考 |
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| 1-1 |
インクブルー(瑠璃) |
酸化コバルト(CoO) |
5gr |
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酸化雰囲気 |
| 1-2 |
スカイブルー(トルコブルー) |
酸化銅(CuO) |
100 |
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| 1-3 |
グリーン(若草色) |
酸化クロム(Cr2O3) |
40 |
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| 1-4 |
エメラルドグリーン |
酸化クロム(Cr2O3 ) 酸化銅(CuO) |
40 100 |
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| 1-5 |
スモーク(灰色) |
酸化ニッケル(NiO) |
20 |
カリが多いと美しい紫色 |
| 1-6 |
パープル(紫色) |
二酸化マンガン(MnO2) |
80 |
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| 1-7 |
ラヴェンダー(青色) |
酸化ネオジウム(Nd2O3) |
300 |
太陽光では赤みをもつ |
| 1-8 |
ピンク(淡く美しい) |
酸化エルビウム(Er2O3) |
300 |
非常に高価 |
| 1-9 |
カナリア(薄い黄色) |
酸化セリウム(CeO2) |
500 |
酸化チタンを1000g加える |
| 2-1 |
アンバー(琥珀)〜茶 |
鉄分(Fe)+硫黄分(S) |
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ビールビン |
還元雰囲気 |
| 2-2 |
赤〜オレンジ〜黄色 |
セレン化カドミ(CdSe)〜硫化カドミ(CdS) |
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鉛は厳禁 |
濃度・原材料・添化の具合などで安定した発色が難しい |
| 2-3 |
金赤 |
金(Au(王水に溶かす)) |
|
ワインレッド |
| 2-4 |
銅赤 |
銅(Cu) |
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江戸切子の少し暗い赤色 |
| 2-5 |
セレンピンク |
セレン(Se) |
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e. 元素周期律表 |
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黒文字はガラスの基本材料、< >は着色剤、( )は添加剤
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1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
16 |
17 |
18 |
| 1 |
- |
- |
- |
- |
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- |
- |
- |
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- |
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- |
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| 2 |
3
(Li) |
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- |
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- |
- |
- |
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- |
5
B |
6
(C) |
- |
8
(O) |
- |
- |
| 3 |
11
Na |
12
(Mg) |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
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- |
- |
13
Al |
14
Si |
15
P |
16
<S> |
- |
- |
| 4 |
19 K |
20 Ca |
- |
22 (Ti) |
- |
24 <Cr> |
25 <Mn> |
26 <Fe> |
27 <Co> |
28 <Ni> |
29 <Cu> |
30 (Zn) |
- |
- |
- |
34 <Se> |
- |
- |
| 5 |
- |
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- |
40 (Zr) |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
47 <Ag> |
48 <Cd> |
- |
- |
- |
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- |
| 6 |
- |
56 Ba |
57 ~※ 71 |
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- |
- |
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- |
- |
79 <Au> |
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82 Pb |
- |
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| 7 |
- |
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- |
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※<Nd><Er><Ce>
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